ガス業界に就職を考えている人たちのために、ガス業界について詳しく調べてみました。
就職活動の参考にしていただければと思います。
1.はじめに
ガス業界は、電力業界と同じように各地域で一社がシェアを占める、他の業界とは一線を画す独特な業界です。
電力は各家庭や企業で必ず必要なエネルギー源ですが、ガスに関してはオール電化住宅も増えていますから、必要ないという家庭もあります。
しかし、ガスは電力に次いでメジャーなエネルギー源であり、各家庭や企業にとって必須ともいえるインフラです。
そんなガス業界の業界事情について、詳しく見ていきましょう。
2.ガス業界の概要
ガス業界は一般的な業界とは全く異なる独特な業界です。
各地域に大きなガス会社が存在し、東京ガスや大阪ガスなど各地域のガス会社が一強状態となっている点で、電力業界と同じような特殊な構造を持っています。
ガスには都市ガスとLPガスが存在します。
都市ガスはガス管を供給地域に整備するインフラ整備が必要ですが、一度整備してしまえば各家庭でガスをより安く利用することができます。
LPガスは都市ガスが供給されていない地域で利用されているガスで、大きなガスボンベを定期的に入れ替えることでガスを利用することができます。
都市ガスよりは割高となっていますが、都市ガスよりも火力が高く企業用にも利用されています。
一方で、ガス業界にも新しい商品が発売されています。
家庭用のガスで電気を発生させお湯を沸かせる「エネファーム」「エコウィル」などの新商品の人気が高まっています。
ガス業界も、エコを意識した事業が推進されているのがわかります。
さらに、ガス業界には電力業界と同様に、今変化の波が押し寄せています。
その一つに、東日本大震災の影響による電気料金の値上がりがあります。
その結果、ガスへの需要は高まりつつあります。
また、電力市場の自由化に続き、2017年から都市ガス市場が自由化しました。
そんな中、石油会社大手がガス会社と協力してLNG火力発電に参入し、大規模太陽光発電(メガソーラー)事業にも取り組んでいます。
このように、インフラ設備の運用管理や既存顧客の存続だけでなく、新エネルギーへの転換や新規事業への参入など、ガス業界にも新しい流れが求められているのです。
3.主要企業と特徴について
都市ガス業界の主要4企業は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスで、「4大ガス会社」と呼ばれています。
この主要4企業について、詳しく見ていきたいと思います。
■東京ガス
売上高が1兆8,846億円と最大なのが、関東にガスを供給する東京ガスです。
東日本大震災後は電力事業の陰りを受け、急速に業績を拡大してきました。
その後も好景気にあぐらをかくことなく、電力業界にも参入するなど順調に業績を伸ばしています。
■大阪ガス
売上高1兆3,220億円大阪ガスが、東京ガスに次ぐ第二位の位置にいます。
家庭用燃料電池のエネファームやダイオキシン除去フィルターなどの開発は評判が良く、環境に配慮した事業を展開しています。
また、中部電力と燃料調達の協定を結び、三重・滋賀ラインという全長60キロに及ぶ天然ガスパイプラインを建設しました。
■東邦ガス
愛知・岐阜・三重にガスの供給を行っている、売上高4,798億円のガス会社です。
中部電力と共同で、伊勢湾横断海底パイプラインの建設に成功しました。
■西部ガス
福岡・熊本・長崎・北九州地域にガスを供給している、売上高1,903億円のガス会社です。
グループ会社が不動産事業や生命保険・損害保険事業にも手を伸ばしています。
4.どんな仕事内容なのか 職種
ガス会社の社員たちは、日々どのような仕事をしているのでしょうか。
■営業活動
ガス会社の業績を支えているのが、営業担当です。
新規顧客獲得のため、各家庭を回ったりガスの良さをアピールするイベントを開いたりします。
よくガスフェアなどという料理教室や新商品の説明会を行うイベントが開催されているのを見かけます。
家を新築する際にエネルギーはガスにするか電力にするかを決めますから、住宅展示場やキッチンやバスの展示場などでも、ガスに関するイベントが頻繁に開催されています。
このような住宅展示場などに営業担当が出向き、イベントを企画しているのです。
■営業所業務
毎日のガス供給を裏で支えるのが、営業所で働くガス会社の社員たちです。
ガス管や設備の点検、ガス料金の集金、LPガスの場合ガスボンベの配達などの業務を毎日滞りなく行わなければ、各家庭や企業にガスが供給されません。
これらの日次業務は、各営業所の社員たちの仕事です。
■燃料調達
ガス会社本社で燃料調達をする燃料部の社員は、会社全体の売り上げを決める大事な仕事を担当するエリート社員です。
燃料を海外から調達する際のコストが高ければ売り上げは下がってしまいます。
燃料コストを下げて売り上げを上げられるように、本社の燃料部の社員たちが活躍しています。
■事業企画
本社の事業企画部では、新しいガス商品や新機軸の事業の企画を行っています。
中でも、環境に優しいエコなガス商品の企画が必要とされています。
電力自由化についでガス自由化も行われる中、新しい事業を企画していかなければ、大規模なガス会社であっても生き残っていけない時代なのです。
■研究開発
エネファームやエコウィルなどの新商品や、ガスのパイプライン、新しいガスの燃料などの開発を行うのが、研究開発部の仕事です。
特に、環境配慮が叫ばれる昨今の事情から、環境に優しい商品の開発が急務となっています。
■インフラ整備開発・管理
都市ガスの場合、地中に埋まっているガス管の定期的な点検や入れ替えが必要です。
よく、街中で「ガス管の工事をしています」という案内があり、道がふさがっていることがあります。
日本のインフラ設備の多くは高度経済成長時に整備されたものなので、近年は老朽化が進んでいます。
ガス管の多くが老朽化しており、ガス漏れやガス爆発が起きては大問題です。
ガス管の管理を行う設備管理部門の仕事も、非常に重要です。
5.今後について
電力事業の自由化に続き、都市ガス市場の自由化が2017年4月に行われました。
そして、2022年には、ガス会社の中でガス管鋼を管理する部門を独立させ別会社にすることで、全ての会社が同じ条件でガス管鋼を共用できるようにする「導管分離」が行われる予定です。
これは、電力事業における、電力自由化に伴う発送電分離の仕組みに相当します。
この流れを受けて、大手のガス会社の最大の強みであったガス管インフラの独占状態がなくなります。
インフラ設備の多くを大手ガス会社が握っていたため市場も独占されていましたが、導管分離が行われれば大手ガス会社以外のガス会社や新規事業者にも市場参入の余地が生まれます。
つまり、導管分離により、大手ガス会社も安泰ではないということです。
そして、導管分離の最大の目的は、ガスインフラの充実です。
ガス管を複数のガス会社が利用することができれば、ガス管の整備が進みます。
これにより、従来は都市ガスが引かれておらず割高なLPガスを利用していた地域にも、導管分離の導入により都市ガスインフラの整備が進むというわけです。
ガス事業の自由競争が加速していくことで、値下げ競争が起こり、ガス料金の値下げが進むでしょう。
電力業界と同様に、今後の展開に目が離せなくなりそうです。
6.最後に
ガス業界について詳しく研究してきました。
今は電力業界と同様に独特な閉鎖的業界ですが、今後は自由化が進み自由競争が過熱することでしょう。
今まで通りの事業を続けるだけでは新しい流れに乗ることは難しく、競争に勝ち抜くことはできません。
変化の大きいガス業界で活躍するためには、世の中の仕組みや流れを正しく理解し、新しい流れを作り出すことができる視点を持つ必要がありそうです。