1. 文具業界の現状は?
文具業界の現状は、個人の消費意欲に回復の兆しが見え始めていることから、少し明るくなってきています。ただ、インターネットの普及で筆記用具を使う場面が少なくなるなど、中長期的には国内の文具市場が縮小する可能性があります。
しかし、実用的商品として文具が使われるケースが減っても、高級時計のように、実用性だけでなくステータスを表す商品としての文具に注目が集まれば、新市場を開拓することができます。具体的には、万年筆のような昔ながらの文具として人気が低下しそうな商品が、若者などにとっては目新しいため関心を持ってもらえるといったケースがあります。
また、日本ブランドを活かしながら、人口が増加することで文具市場の拡大に期待できる海外展開も進んでいます。海外でも日本の文具の良さを伝えることができれば、文具業界の将来はさらに明るくなるでしょう。新興諸国では人口増加が著しいところもあり、拡大する文具市場に参入して大きな収益を上げる日本企業が出てくる可能性があります。
実用商品としての側面が低下するにつれて、文具業界ではヒット商品を生み出すためのより高い企画力が求められるようになっています。スマートフォンアプリ等で予定を管理できる時代になっても紙の手帳を使う人が少なくないことなどから、魅力ある商品を開発できれば文具業界は規模を維持するのみならず、さらに成長できるチャンスがあります。現在はちょうど文具業界の将来が明るいものとなるかどうかを左右する転換点とも言えそうです。
2. どんな企業があるの?市場シェアについて
文具業界の現状について理解したところで、文具業界で高いシェアを誇る企業についても知っておきましょう。
まず、トップシェアを誇るのはアスクルです。文具をはじめとする事務用品の通販ビジネスで知名度が高いです。書類の電子化などが進んでいるとはいえ、依然としてオフィスでは文房具が活躍する場面が少なくありません。コスト削減に取り組む企業に対して、幅広い文具をまとめて迅速に配送できる点に強みがあります。ただ、実用品としての文具販売が伸び悩めば、アスクルのシェアは低下するリスクがあります。景気変動がオフィスでの文具需要を上下させる点も懸念材料です。
アスクルに次ぐシェアを持つのはコクヨです。「キャンパスノート」などを中高生時代に使ったことがあるという人もいるのではないでしょうか。図表を描きやすいドット入りノートやルーズリーフを発売するなど、新商品の開発にも力を入れています。少子化による学用品販売の低下が心配されています。アスクル・コクヨのシェアは 15 ~ 16 %程度です。
そのほかの高シェア企業としては、大塚商会や岡村製作所、内田洋行、イトーキが挙げられます。個人消費者にはあまりなじみがない企業が並んでいると感じるかもしれませんが、文具業界が就職先候補に入っているのであれば、高シェア企業としてアンテナを張っておきましょう。
多くの人が企業名や製品を身近に感じる企業としては、パイロットコーポレーションが 5 %程度のシェアとなっています。快適に筆記できるドクターグリップが定番ブランドの 1 つです。近年では、「フリクション」が大ヒットし収益に貢献しました。
事業の多角化を進めている企業には三菱鉛筆があります。高級品も含めた筆記具の製造で培った技術を活かし、化粧品ビジネス等に進出しています。文具業界では事業の多角化を進めてきた企業が少ないだけに、三菱鉛筆の取り組みが文具業界に新たな風を吹かせる可能性があります。
3. どんな仕事があるの
文具業界には一般消費者にとっても身近な企業が多数あることがわかりました。高級品のラインナップ強化や新興諸国への進出で成長できる可能性もあるとなれば、文具業界への関心が一気に高まってきた就活生・大学生もいるでしょう。そこで、文具業界にはどのような仕事があるのかをチェックしてみましょう。
まず、商品の企画・開発という重要な仕事があります。商品企画は、新たに市場へ投入して消費者の心をつかめる商品を企画します。品質にこだわるだけでなく、話題になるような商品を企画することができれば、会社の業績に大きく貢献できるチャンスがあります。
商品開発部門では、企画をもとに実際に商品を開発します。筆記具を例にとると、コストや原材料の安定確保にも配慮しながら、消費者の書き心地や、見た目の美しさなどにこだわりながら開発を進めることとなります。いくら優れた企画があっても商品化することができなければ日の目を見ないだけに、商品開発も文具業界における重要な仕事の 1 つと言えるでしょう。
文具の販売数を伸ばすためには、利用者がどのような商品を求めているのかを的確に把握する必要があります。売上高のデータはもちろん、時にはアンケート調査なども実施しながらマーケティングを行う仕事もあるのです。マーケティングはあらゆる業界で発生する仕事です。ただ、文具業界は潜在顧客が文字を書き始めたばかりの子供から高齢者まで幅広いため、ターゲットとする顧客の絞り込みにマーケティングを活かすなど、大きなやりがいを感じやすいと言えそうです。
新商品の開発に成功すれば、営業を実施して自社製品の魅力を伝える必要があります。個人消費者の元に商品が届く前に、小売店の担当者に自社製品に魅力を理解してもらうことが必要です。そして、 SNS など現代のコミュニケーションツールも活用しながら、個人消費者にも魅力を伝えます。伝え方を工夫することで自社製品への注目度が高まり、想定を上回る販売数を記録すれば営業の仕事は大成功となりますね。文具の開発ではなく販売に取り組んでいる企業は逆に、魅力的な新商品を開発企業からいち早く入手することで売上を伸ばせます。営業の仕事は開発された商品の魅力を世に伝えるうえで特に重要です。
4. 今後の課題と動向について
文具業界では今後さらにデータの電子化が進むことで、需要が減少することが懸念されます。少子化や教材の電子化で学用品需要が低下することも課題です。ただ、インターネット通販を利用して従来は文具にあまり関心のなかった層にも幅広い文具を販売することができれば、収益を拡大できるチャンスがあります。
また、文具を使う機会が減ったことで逆に文具を貴重な存在と考える流れが強まることも考えられます。国内でも大規模な文具販売店が登場していることから、文具への関心は根強いと言えるでしょう。消費者の心を引き付ける魅力的な商品開発を続けられれば、今後も文具業界は安泰と言えそうです。
中長期的な視点では、万年筆などの高級商品の販売を増やすことで国内市場の収益を確保すると考えられます。業界が成長するためには、成長著しい新興諸国の市場で高いシェアを獲得する必要があります。日本とはニーズが異なる国も少なくないと考えられることから、海外の現地ニーズをいかに効率よく汲み取って海外向け製品の開発につなげるかは文具業界が抱える課題の 1 つです。
5. まとめ
文具業界は書類の電子化が進んでいる時代背景を考えると衰退しているのではないかと考える就活生も少なくないでしょう。しかし、足元では景気回復に伴って消費意欲が高まってきていることなどから、文具業界は堅調です。中長期的には付加価値の高い高級文具の販売増や積極的な海外進出を通じて成長できるチャンスもあります。新たなアイデアにより身近な存在である文具の魅力を高めたいと考えているなら、文具業界への就職を考えてみてはいかがでしょうか。