1. 新聞業界の現状は?
新聞業界は大きな変化が起こっている業界の1つです。
新聞業界では発行部数の減少により販売収入が低下してきています。新聞を読む人が減ってきていることが一因です。発行部数の減少に伴って広告媒体としての価値も低下し、広告収入の減少に直面しています。こうした流れは地方の中小新聞だけでなく、全国紙にも見られます。今後も新聞を読む人は減少を続けると考えられ、新聞業界の現状は厳しいと言えるでしょう。
もっとも、売上高が減少してもコスト削減を進めることで利益を確保することは可能です。新聞業界では新聞の電子化を進めています。電子版と紙版の両方を購読してもらうことで顧客単価を引き上げるとともに、紙の新聞の処分を面倒に感じたり、移動時にスマートフォン等で新聞を手軽に読みたいと考えたりする層にも新聞を読んでもらうことを目指しています。
電子版が普及すれば新聞配達にかかるコストを削減できるだけに、各社とも電子版の普及に力を入れています。ただし、電子版の新聞は無料のインターネットニュースなどと競合関係にあることから、独自性を打ち出して料金を支払ってでも電子版の新聞を読みたいと思わせることが不可欠です。
アメリカでは米トランプ大統領が新聞を含む一部メディアを激しく非難しています。インターネットの普及で多様なメディアが発信する情報を多くの人が入手できる現在では、日本の新聞業界も発行部数が減っているものの、以前よりも新聞記事が多くの人の目にさらされていることを踏まえる必要があります。記事への注目度が高まりやすくなっている点は、厳しい現状の中にも一筋の光があることを意味しています。
2. 大手各社の違いは?
日本の新聞大手と言えば、朝日・毎日・読売・日経・産経が挙げられます。これらの新聞は、全国の幅広い地域で購読可能となっているため、身近な新聞だと感じる層が多いでしょう。とはいえ、各社はそれぞれ個性を発揮しています。そこで、大手各社にはどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
まず報道スタイルに違いがあります。新聞はメディアとして公平で正確な報道を心がけることにはなるのですが、どうしても政治色などが出てしまいます。公平性を欠いているとの批判が出ることもありますが、各社が個性を発揮することも新聞の魅力の1つだと考えることもできます。就活に向けて新聞業界に関心がある人は、前述の5紙の一面を比べてみると各社の個性がわかり勉強になります。
また、大手各社のうち、日本経済新聞は経済記事に力を入れています。ビジネスパーソンにとって必読の新聞と言えるでしょう。もっとも、近年は日経も日曜にカラー刷りのページを取り入れるなど、ビジネスパーソン以外にも関心を持ってもらえるような工夫を凝らしています。
価格面では日経が高め、産経が安めの価格設定となっています。新聞を購読する際、日経新聞を選択する層は仕事の関係などで日経新聞が必読であるケースが多いと考えられます。そのため、高めの価格設定でも一定の読者を確保できるのでしょう。
朝日・毎日・読売・産経のうち相対的に購読料が安めの産経は、大手ならどの新聞でもよいから毎日読みたい、と考える層に訴求できそうです。販売部数の減少に伴い、コスト削減では利益を確保しきれなくなってきた場合、新聞各社は値上げを進めることになるでしょう。新聞の購読料の値上げで購読者が価格に対する意識を高めれば、産経新聞が注目を集める可能性があります。
3. 新聞業界の今後の課題
新聞業界の今後の課題としては、いかにして電子版を普及させるかということが第一に挙げられます。電子版を普及させることができれば、紙媒体よりもコストを抑えることで利益を確保しやすくなるからです。
電子版の普及には、新聞ならではの記事を配信することが求められます。速報性ではインターネットニュース等を大きく上回ることが難しいからです。新聞各社は全国各地に取材ネットワークを持っています。ネットワークを活かした深みのある記事を多数配信できれば、新聞への関心をつなぎとめられるのではないでしょうか。
また、紙の新聞の発行部数が極端に少なくなってきた地域では、販売店を減らすことも検討する必要があります。採算が合わない地域からは順次撤退を進めるなどして、さらなるコスト削減を進めたいところです。
とはいえ、高齢者が多い地方部では電子版の新聞販売を伸ばしづらいという事情もあるでしょう。そこで、コンビニエンスストアなど他企業と連携し、新聞を他の商品とまとめて配送できる体制を整備することなども検討すべきではないでしょうか。
4. 新聞業界の仕事
新聞業界の現状や課題について把握したところで、新聞業界ではどのような仕事をするのかをチェックしてみましょう。
新聞記事が出来上がるまでには、取材から原稿執筆、校閲などの過程があります。取材の仕事は比較的イメージしやすいのではないでしょうか。ただし、旧来は直接人に会って話を聞いたり、事件やイベントの現場に出向いて様子を確認したりといった取材方法が中心でしたが、近年は変化も見られます。インターネット等で得られる情報も適宜参考にしながら効率よく、正確な記事を作成する力が求められることになります。
校閲は記事の間違いを正すお仕事です。記事の内容に誤りがあったことが判明すれば、新聞報道への信頼度が低下してしまいます。インターネットを通じた情報収集が容易になっている時代ですが、インターネット上の情報には誤りも少なからず含まれています。そのため、事実確認を安易に行ってしまうと、誤った情報が拡散されることになります。電子版を普及させるにあたってはインターネットニュースよりも信頼でき、深みのある記事を配信する必要があるだけに、校閲者の仕事はより重要度を増すのではないでしょうか。
5. 新聞業界ってどんな人が向いているの?
新聞記事を作成するにあたっては、取材が極めて重要です。そのため、多種多様な情報への感度が高い人が新聞業界に適していると言えるでしょう。自分が関心のある情報だけでなく、世間で何が流行しているのかなどを、世代や性別、地域に関わらず把握する能力に長けていれば、新聞記者として優れた取材ができる可能性が高くなります。
また、デジタル機器の扱いに習熟している人も、新聞業界で活躍しやすいと考えられます。電子版の新聞をより見やすくするとともに、タイムリーに記事を配信するためには電子デバイスを使いこなすことが不可欠です。紙媒体の新聞が中心であった時代とはやや異なる人材も求められているのです。
さらに、対人コミュニケーションが得意な人も新聞業界向きです。より深みのある記事を作成するためには、直接人と合って取材をする際に多くの情報を引き出す必要があります。「この記者になら積極的に話をしたい」と相手に思わせることができれば、より良い記事を仕上げる材料が整います。新聞の取材対象となる層は老若男女様々です。同世代でのコミュニケーション能力だけでなく、誰とでもすぐに打ち解けられる外向的な性格であれば、新聞業界で活躍するチャンスが大きいと考えられます。
6. まとめ
新聞業界は、新聞発行部数が減少していることから衰退傾向にあります。衰退傾向にある業界となると、就職しようという気持ちになりづらいかもしれません。しかし、新聞の電子化が進むなど、変化の途上にある業界である点は1つの魅力です。新聞業界に入れば次世代の新聞を作るチャンスがあるからです。業界の衰退を食い止め、新聞の将来を明るくしたいという夢を持てる人は、新聞業界にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。