就職の面接で面接官に「では、まず自己PRをしてください」と言われることほど、緊張することはありません。
自己PRという自由な時間を割り当てられ、どのようなテーマを選ぶのか、どのように話を進めるのかといったことすべてが任されるわけです。
PR内容はもちろん、話題のチョイスのセンスやコミュニケーション能力など全てをゆだねられるので、緊張するに決まっています。
ここでは、自己PRでどう話せばいいのか、どのようなエピソードが求められているのかについて、詳しくお話ししたいと思います。

はじめに

自己PRとは、自由な時間を与えられ、フリースタイルで自分が一番アピールしたいことを話すことです。
企業側が自己PRで読み取る就職希望者の情報は、PR内容はもちろん、コミュニケーション能力、エピソードをチョイスするセンス、人柄など様々なものがあります。

フリースタイルで話してもらうことほど、その人のことがよくわかる面接方法はありません。
それだけに、自己PRする側としては、十分な準備をしておかなければ失敗してしまう重要な局面なのです。
自己PRは普段生きていれば全くする機会など無いことですから、面接に際しては必ず事前に準備しておかなければなりません。
しかも、自己PRの準備とは、自分がアピールしたい情報を用意しておくだけではありません。
それでは、短い時間の中で面接官の興味を引くようなトークを展開することができないでしょう。
自己PR用の原稿を準備し、実際に模擬面接のような場で第三者を面接官に見立て、自己PRをする練習をする、声の出し方表情の作り方などを確認するなど、いくつもやるべきことがあります。
自己分PRの準備の中でも、話すべき内容やエピソードを選ぶことは非常に重要です。
この時の選択が、面接の空気を大きく変えるのは間違いありません。

企業が自己PRを聞く背景

そもそも、企業側はなぜ就職希望者の自己PRを聞きたがるのでしょうか?
それは、フリーでしゃべる時間を就職希望者に与えることで、この人はどのような対応をするのか、そのフリータイムをいっぱいに使って面接官を楽しませてくれるのか、コミュニケーション能力や人柄はどうなのかなどということを、総合的に知りたいからです。

また、最初に多くの情報を就職希望者自身に語らせることで、面接官が質問すべきこともわかります。
自己PRはたいてい面接の最初の方に求められます。
そこでフリータイムを与えることでこの人がどう動くか、それを見るだけで今後の方針がほぼ固まると言ってもいいでしょう。
企業は、まず就職希望者にフリータイムを与えて自由に動かしてみる、そうすることでその人の人となりがわかります。
自己PRをしてもらうことで、会話のとっかかりもできます。
面接とは面接官が就職希望者に質問していくことで、その人のことを知るための場ですから、まず就職希望者側から情報提供してもらうことで、後の面接がスムーズに進むのです。

企業に刺さるPRとは

では、どのようなPRをすれば、企業に刺さるのでしょうか?
まずは「主体性」があることをアピールするということです。
企業側は、社員が主体的に動いて会社を良くしていってもらいたいと考えています。
何でもこちらから指示をしなければ動かない社員ばかりだったら、生産性が悪く仕事になりません。

ですから、自己PRで「イベント参加者を増やすためにはこうすれば良いと思った」「アルバイトで作業効率を良くするために、こんな工夫を思いついてやってみた」などという、「主体性」を示すPRが企業にぐさっと刺さるはずです。
ただ、「企業に刺さるPR」などというと、誰が見ても目を引かれてしまうような体験をPRしようとする人がいますが、それは違います。

何も、自己PRをするためにアクロバティックなことをしてまで、人の目を引くようなPRをひねり出す必要はありません。
普通で良いのです。
話すエピソードは普通でも、物事に対する真摯な姿勢やまじめな態度、努力していることなどを、わかりやすく相手に伝えることができれば、それが一番です。

そして、この「わかりやすく相手に話を伝える」ということが、意外と難しいかもしれません。
自分が経験したアルバイトの仕事内容や大学で学んだ専門的な知識を、全くその方面に詳しくない人にわかりやすく説明するというのは、実は非常に高いコミュニケーション能力と気遣いを必要とします。
人にわかりやすく物事を伝えるということは、相手に対する配慮がなければできないことです。
わかりやすい自己PRをする人は、コミュニケーション能力が高く人柄も良いという評価を得られるのは間違いないでしょう。

どんな経験から選べばいいの?

就職希望者が頭を悩ますのは、自分の中のどの経験を自己PRに選べば良いのかということです。
これは、自分の中で一番自信があること、一番苦労したこと、一番うまくいったことなど、面接の一発目で最も面接官にアピールしたいことを選べばそれでよいと思います。
それでも選びかねているというのであれば、面接官受けするエピソードを選ぶのが良いでしょう。
面接官受けするエピソードとは、とにかく苦労して大きなイベントを成功させた、イベント実施中に大きなトラブルが発生したが何とかメンバーと力を合わせて切り抜けたなどという、ドラマチックな展開を持つエピソードです。
話を展開していく中で、「それでどうなったの?」と先を早く知りたくなるような話をすれば、面接官の食いつきは良いはずです。

もちろん、そんなドラマチックな展開の話を全員が持っているわけはないと思います。
しかし、誰しもアルバイトや大学で学んでいる中で苦労したことや頑張ったことがあると思います。
人から見ると大したことないかもしれませんが、自分の中では大変だったんだ!頑張ったんだ!と胸を張って言えるなら、しっかりとアピールしてみてはいかがでしょうか。
そんな、まじめで真摯なエピソードも、面接官にぐさりと刺さるはずです。

なかなか思いつかない人へ

そうは言ってもなかなかエピソードが思いつかない!という時は、どうすれば良いのでしょうか?
アルバイトやサークル活動、大学生活をしてきた経験が少しでもあるのであれば、何かエピソードがあるはずなのです。
ただ、その表現方法がわからないため、自分に話すべきエピソードがないと勘違いしているのではないでしょうか?
全く思いつかないという人のために、いくつかの質問をします。
その質問の答えが、そのまま自己PRのエピソードの候補になるでしょう。

【勉学編】
取得困難な資格やスキルを身に着けた経験はありますか?
大学での授業を受ける中で、努力したことはありますか?
大学の授業を受ける中で、将来を意識して身に着けた知識はありますか?

【アルバイト編】
過去に、最も苦労した仕事は何ですか?
最も成功した仕事は何ですか?
お客様から感謝されたことはありますか?
お客様を怒らせてしまったことはありますか?その後、どう対処しましたか?

【サークル活動編】
サークル活動の中で最も努力したことは何ですか?そこから得たものはありますか?
大きな失敗をしたことがありますか?その失敗から得たことは何でしょうか?
サークルメンバーと協力してやり遂げたことはありますか?
サークル活動の中で人助けや協力をしたことがありますか?

自分の過去の経験を思い浮かべて、自分でも自分に質問を投げかけてみてください。
そして、その中から、自分が自信を持って人にPRできることが無いか、探してみてください。
きっと、良い自己PRになるエピソードが見つかるはずです。


最後に

自己PRは就職の書類選考や面接において、重要なものです。
そして、とても難しいものでもあります。
だからこそ、しっかりと準備期間を設け、自己PRの原稿を練り自己PRの練習をしてください。
最初の自己PRが成功すれば、面接の空気が一気に良いものになります。
そうなればしめたもの。
その面接はきっとうまくいくはずです。