日本への訪日観光客は年々増えており、それに伴い宿泊施設への需要が高まっています。特に気軽に泊まれるビジネスホテルや、最高の旅をサポートする高級ホテル・リゾートホテルの稼働率は、今後も増えていくことが見込まれます。2020年の東京オリンピックがその需要に拍車をかけるでしょう。
また、インターネットを活用したAirbnbのような新たな民泊事業も生まれています。

今回はそんな今後の成長が期待されるホテル業界の現状や実際の仕事内容、そして気になる年収などについて掘り下げていきたいと思います。

ホテル業界の現状と動向

日本政府観光局の訪日外国人の統計データ(参考:https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/index.html)によると、2011年から2016年まで、訪日観光客は年々増えている状況にあり、その数は2011年が621万人に対し、2016年は2403万人とその数は約4倍になっています。2020年には東京オリンピックがあり、その数はさらに増えていくことが予想されます。
そういった背景からホテルの稼働率も上がっていくことが予想できます。2011年のビジネスホテルの稼働率は67.2%だったのに対し、2016年は74.4%と7.2%増となっています。ホテルの数では、2011年の9,863から2016年は10,101と微増となっています。

またこういった外国人観光客の動向をみて、外資系ホテルが日本での開発に取り組んでいる状況です。ハイアットリージェンシーは、2018年8月にグループ初となるビーチリゾート沖縄に開業予定である他、ヒルトングループなども沖縄の開発に乗り出しています。また温泉地にも注目されており、インターコンチネンタルホテルズグループが2019年に箱根でホテルを開業予定としています。

そして、なんと他業種企業がホテル業界に着目しています。例えば、ワイアードカフェなどを運営するカフェ・カンパニーやウエディングのテイクアンドギブ・ニーズ、アウトドアブランドのロゴスコーポレーションなどです。飲食・ウエディング・アパレルと、さまざまな業界の企業がホテル業界への参入を図っています。

このように訪日観光客の増加に伴い、ホテルの稼働率が上がることから、外資系ホテルも日本でのホテル開発へ身を乗り出しているのです。

「ホテル業界で働く」とは

ホテル業界で働くと入っても、みなさんが思い浮かべるホテルマンやフロント業務だけではなく、その職種は多岐に渡ります。ここではホテル業界の主な職種を紹介していきます。

支配人、フロント、客室係などのサービス業務

主に宿泊客の応対をする職種になります。宿泊客の意見や言葉を毎日聞くことができるので、感謝の言葉や笑顔などを間近で感じることができます。また、さまざまなお客様と出会うことができ、変化のある日常を過ごすことができるでしょう。一方で、24時間宿泊客の対応を強いられるため、不規則な生活になる場合もありますし、理不尽な要望などにも対応しなければいけません。

営業

ホテルの集客は、主に自社ホームページで行うか、旅行代理店や比較サイトなどで行います。そのため、自社の宿泊施設を取り扱ってもらえるように提案や交渉を行います。また法人と提携して、出張時などに定期的にホテルを利用してもらえるような営業も必要となります。営業は、実績がそのまま会社の数字にも反映されるので、より結果を実感でき、やりがいをもてるでしょう。しかしそのためには、競合他社との差別化の提案ができるように、自社と他社のサービス理解が必要になりますし、それを効果的に伝えるトーク力を磨かなければいけません。

宴会やイベント等の企画職

昨今のホテルには、宿泊施設としての利用だけでなく、結婚式や周年イベントなどの利用なども多くされます。そのため、それらのプランニングを行う企画職があります。企画職は、どのようなパーティー・イベントを行うのかをヒアリングし、企画・実行していくことになります。顧客の重要なシーンを一緒に作り上げていく部門となるので、やり遂げた時の達成感や作り上げていく楽しさを存分に感じれる部門でしょう。それだけに、責任感と顧客満足のための行動力が必要になり、失敗が許されない環境下での仕事となります。

ホテル業界 売上高企業ランキング

ホテル業界で売上の大きな企業をまとめてみました。

1位 西武ホールディングス

売上高:1,885億円(2017年3月期)
1位は西武鉄道やプリンスホテルを運営する西武ホールディングスです。売上高は、ホテル事業のみで算出しており、グループ全体の約3分の1程度を占めます。西武ホールディングスのホテル事業は、グループでも中核を担い、特にプリンスホテルは全国でも知名度の高いホテルです。西武ホールディングスは、鉄道などの自社の交通事業と連携してホテル事業を展開できるので、自社サービスのみで旅行業務を展開できるといった強みがあります。

2位 リゾートトラスト

売上高:1,435億円(2017年3月期)
会員制のリゾート事業を展開しており、業界での利用者数はNo1を誇ります。会員だからこそ提供できる高級なサービスが好評で、2016年9月時点では約17万人の会員が登録しているようです。会員ホテルを中心としたリゾート事業は、医療施設やゴルフ事業などと連携し、日常にはない娯楽空間と健康サポートを行っています。

3位 東京急行電鉄

売上高:1,055億(2017年3月期)
3位は東急でおなじみの東京急行電鉄のホテル・リゾート事業がランクイン。東急急行電鉄は、東急ホテルズを子会社に持ち、東急ホテル・エクセルホテル東急・東急REIホテルなど、全国に42ホテル(2017年時点)を展開しています。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテルである、「ザ パーク フロント ホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営しているのも東急ホテルです。また、2018年春には「東京ベイ東急ホテル」をディズニーランド近くに開業予定となっています。

4位 ホテルオークラ

売上高:763億(2017年3月期)
ここでホテル事業のみをメインとして行っている企業がランクインしました。ホテルオークラといえば、帝国ホテル、ニューオータニと並んで「ホテル御三家」と称される高級ホテルであり、50年以上の歴史を誇るホテルです。2018年にフィリピンの首都マニラに「ホテルオークラマニラ」(仮称)、2020年にミャンマーのヤンゴンに「オークラ プレステージヤンゴン」(仮称)、2021年に台湾の台中に「オークラ プレステージ台中」を開業予定とするなど、グローバル展開も図っているホテルです。

5位 京王電鉄

売上高:753億(2017年3月期)
5位はまたもや交通系事業をメインに行う企業のレジャー・サービス業がランクインしました。ホテル業では、主に京王プラザホテルや京王プレッソインなどを展開しており、京王プレッソインは東京都心だけでも2,800室を構えております。アクセスの良い好立地と宿泊しやすい価格帯が、ビジネスマンや観光客から人気を集めています。

気になるホテル業界の年収は?

ホテルで働く人の平均年収は、ホテルにより上下あるものの、400万円~600万円程度のようです。各求人媒体で、実際の求人情報を見てみても、一般スタッフは350万円~400万円、副支配人で400万円~500万円、支配人で500万円~といったものが見受けられました。
ちなみに、西武ホールディングスのプリンスホテルでの初任給は206,000円(首都圏の大卒者・2016年実績)となっています。

まとめ

外国人観光客の増加に伴い、年々稼働率が上がるホテル業界は、まだまだ発展が期待できる業界です。日本への旅行需要には、外資系ホテルも注目しており、2020年の東京オリンピックまでは過熱していくことが見込まれます。

そして、ホテル業界では、交通や他リゾートの複合的なサービスを展開している企業が強く、今後はより差別化が求められていくのではないでしょうか。
Airbnbなど新たなサービスと競合していくためにも、インターネットを活用した新規プロジェクトの立案なども今後求められるのではないでしょうか。