従来、社会人経験を積む場所として認知されてきた「長期インターン」。しかし現在では、吸収力が高く成長の早い学生インターン生が、事業の急成長を後押しする事例が増えています。


今回お話を伺った、国内最大級のレシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」を運営する株式会社エブリーも、学生インターン生の“若い力”が急成長を支えた企業の一つ。インターン生が本採用に進むなど、長期インターン採用で事業も学生自身も成長させることに成功しています。


そこで同社には、長期インターンを採用した経緯と、事業を伸ばすための育成施策、採用のコツまで赤裸々に語っていただきました。



「若い力が必要だ」と考え、長期インターンを採用。「DELISH KITCHEN」急成長のきっかけは、“ユーザー視点”だった 



ーーまずは、簡単に御社の紹介と、インターン採用の経緯について教えてください。


佐藤真広(以下、佐藤)
:株式会社エブリーは、2015年9月に設立し、テレビCMでもお馴染みの「DELISH KITCHEN」をはじめとする5つの動画サービスを運営している若い企業です。「動画を通じて世界をもっと楽しく、もっと充実した毎日に」をモットーに、 新しい動画体験を多くの人々に届けています。


弊社は、創業当初から長期インターンを採用してきました。採用開始当初は、社内メンバーに学生を紹介してもらっていましたが、事業の拡大に合わせて採用の間口を広げようと思い、インターンの求人媒体に登録し始めたのが経緯です。


ーー登録したインターン求人サイトのの1つが、 Infra だったんですね。


佐藤:そうです。Infraは「完全成果報酬型」だったので、学生を採用してからはじめて料金が発生します。掲載するだけでは料金がかからないので「とりあえず使ってみよう」と気軽に導入したのですが、実際に使ってみたところ効果が出ました。現在では、累計応募数が100名を超えています。


ーー「動画メディア」は、まだ歴史が浅い領域だと認識しています。創業当初、立ち上げの難しさや苦労はありましたか?


佐藤:創業当時は、社長や役員も含めて、動画制作の経験があるメンバーはいませんでした。カメラやライトなどの動画撮影に必要な機材も、会社を立ち上げてから揃えたんです。メンバー同士で、逐一話し合いながら撮影してみたり、YouTuberが使っている動画編集ソフトを真似してみたり。手探り状態で始まったビジネスも、今思い返すと楽しかったです。


ーーなるほど。しかし、事業が軌道に乗る前からインターンを採用されていたのはなぜですか?


佐藤:「若い力」が必要だと考えていました。というのも、弊社がビジネスを立ち上げた当時、動画メディアは“はしり”の時期だったんです。新しい領域に踏み込む際は、「トレンドを掴み取る力」が鍵を握ります。常にトレンドに触れられる環境にいる「若い世代」を社内メンバーに含むことが必要だと考えました。


また、僕たちのつくる動画は、スマホで見ることを前提としていました。スマホを一番使いこなしている若い子たちの力を借りることは、会社が成長するために有効な手立てでしたね。
 

経験ではなく、姿勢をみる。事業を伸ばす長期インターン採用のコツ   




ーーサービスの特性を考えたときに、若い人材がサービスの提供側にいることは必要なことだったんですね。ちなみに、学生からの応募を獲得するため、Infraで求人を出稿する際に心がけていることはなんでしょう。



佐藤:求人のタイトルを、応募者の目につきやすくすることです。タイトルの冒頭に「国内最大級の動画メディア」と付けると、インパクトを出しやすくなります。応募してくれる学生も「動画メディアを展開している会社」と認識してくれるので、その後の選考もスムーズです。


そのほかに、ディレクターの求人タイトルには「企画から分析までお任せします」と明記しています。こうすることで、ディレクション業務の内容や任される裁量をイメージしやすくなりますよね。学生がインターン探しをする際、興味のある職種で探している場合が多いと思うので、実際の業務内容を想起させ、応募前にできるだけ学生の不安を払拭することを心がけています。



エブリー社のInfra求人タイトルを抜粋


ーーなるほど。ちなみに、応募してくる学生に対して求めている姿勢はどのようなものですか?


佐藤:動画メディア市場は、順調に伸びています。しかし、まだまだ歴史が浅いので経験者は多くありません。もとより、学生の中から動画メディアの知識やスキルを持った人材を見つけることは困難です。そのため、弊社の採用活動では経験を求めません。


それよりも、経験のないことにどんどん取り組む「勇気ある姿勢」を重視しています。若い人が長けている点は、「新しいことを素直に吸収していく力」です。創業当初の私たちのように、未開拓の領域を進んでいく過程を「一緒に楽しむ」ことができる方が、エブリーに向いています。





ーー御社のインターンでは、新しい領域に挑戦することができるんですね。やはり、その点に魅力を感じて応募してくる学生が多いのでしょうか。


佐藤:そうですね。「最近伸びている業界を見てみたい」という方もいますし、「面白いことをやってみたい」と言ってくれる方もいます。


また、ありがたいことに、「IT企業の中でも“旬な会社”」と捉えてくださっている応募者も多いようです。特に「DELISH KITCHEN」はたくさんの学生に認知していただいており、その知名度も応募者の数と関連していると思います。IT企業に興味がある学生の中でも、弊社を名指しで志望していただけるのは、とても嬉しいです。


ーー採用担当の立場から、インターン採用のコツを伺いました。ここで、御社の創業初期からインターン生として活躍し、正社員になられた帆苅さんに、長期インターンを始められた経緯をお伺いしたいと思います。





帆苅晃太(以下、帆苅)
:私は大学で機械系を専攻しており「このままこの分野で就職するのだろう」と思っていました。しかし、いざ就職活動をしてみたところ、「もっと違う世界を見てみたい」と考えるようになったんです。


それから、就職活動を辞めて大学院に進むことを決め、インターン探しを始めました。今まで見たことのない世界として思い浮かんだのが、「スタートアップ」です。どんな速さで成長していくのか、中の人たちはどのように働いているのか。そういった興味を持ってインターンを探していた折、見つけたのがエブリーでした。


ーー帆苅さんも、エブリーの「面白そうな魅力」に興味を持った一人なんですね。現在は正社員で働いているとのことですが、大学院は休学されているんですか?


帆苅:そうなんです。大学院の1年目が終わる直前に、正社員としての内定をいただきました。はじめは単なる興味でインターンを始めたものの、自分が楽しみながら仕事をしていることに気づきまして。「今は全力でこの仕事に力を注ぎたい」と考え、大学院は休学しました。

だから、長続きする。インターン生が“段階的”な成長を感じられる「グレード評価制度」




ーーそれでは、御社がインターン生の成長をどのようにサポートしているのかをお伺いしたいと思います。まず、インターン生に任せる業務はどういった感じでしょうか。


佐藤:弊社のインターンでは、基本的にメディア運営にまつわる業務に従事してもらっています。動画の企画から、撮影、編集、配信までの一連のフローが具体的な内容です。また、配信後の分析も一部インターン生に任せています。


近年は事業が拡大してきたので、任せる業務も多様化してきました。動画コンテンツの制作以外にも経営企画やマーケティング、そして広報などの部署でもインターン生を採用することがあります。


ーー幅広い部署でインターン生が活躍していらっしゃるんですね!ちなみに、裁量権を決める基準はあるんですか?


佐藤:本人の能力・意欲次第です。こちらから指示したタスクをこなすことができたら、また次のステップのタスクを与えます。出来る能力があれば、どんどん任せていくのがスタンスです。逆にいえば、能力や意欲があれば自ら挑戦してほしいと私たちは思っています。


弊社では、メンターとインターン生で1on1の面談を行うのが決まりです。そこで学生からの意思や考えをヒアリングした内容を、業務の割り振りに活用しています。また、そこでは普段の仕事の様子や成果についてのフィードバックも行うようにしているんです。せっかくインターンに参加してもらったからには、少しでも成長を“実感”してほしいので。


ーーなるほど。面談はインターン生の教育にも関わってくるんですね。


佐藤:そうなんです。インターン生を教育するにあたり、弊社では独自の「グレード式評価制度」を設けています。部署ごとの細かい業務のレベルを定めたものではなく、インターン生が共通して目指すべきグレードを示したものです。面談で「次のグレードに進むためにすべきこと」について相談を行うことで、次に目指すべき目標が明確になって素早く行動に移せます。そうやって1つずつ確実に壁を乗り越えていくことで、「段階的な成長」を得ることができるんです。



            エブリー社の「インターン面談シート」 


ーーそれはとても良いですね!確実に成長していると実感できれば、学生もより成長意欲が増しますね。


佐藤:この評価制度は、学生のモチベーションを上げることだけが目的ではありません。学生がインターン生として入社した後の、「定着率」にも効果が現れています。3ヶ月間や半年間頑張ってコミットしても、成長の実感がなければその先も続けられるか不安ですよね。しかし、こうやって定量的な結果が見れることで、「もっとここで頑張りたい」と思えるようになります。


そのため、弊社にインターンとして入社した学生は1年以上続けてくれることが多いですし、帆苅君も含めて5名のインターン生が本採用で入社してくれました。学生が成長するためには、企業側がしっかり「成長の見える化」を徹底しなければいけないのだと実感しています。


ーーインターンを続けていけば、この先も伸びるビジョンが描けるわけですね。ただ、のめり込みすぎて学業が疎かになってしまうのではありませんか?


佐藤:いえ、そんなことはありません。学生には、大学での勉強をしっかり両立してもらいます。そのため、通勤・通学時間や週当たりの授業数などをしっかり把握するようにしているんです。


弊社代表は、理系の大学と大学院を卒業した後、エンジニアとしてさらに力を付け、エブリーを立ち上げました。このような背景からも、弊社は学生時代に学んだ内容や学歴を重要視しているため、本人の意志がない限り大学をないがしろにするべきではないと考えています。ちなみに、ここでの“学歴”は、“偏差値の高い大学を出ること”ではなく、「将来のためにしっかり勉強をやりきったか」を表す指標です。


仕事にやりがいや楽しさを見出すようになると、授業よりもインターンを優先したくなる学生がいます。でも、学生時代の今興味を持っていることと、10年後に自分のやりたいことが同じとは限りませんから、この先の人生において「幹」となる大学での勉強はしっかりやってほしいと思います。ただし、インターン生が弊社での仕事に全力を注ぎたいと本気で思ってくれるのであれば、その意志はしっかりと受け止める姿勢です。


帆苅
:インターン生自身も、会社の考えを汲んで行動しています。ただ、私は大学院で勉強するよりもこの会社で一生懸命やるのが“将来的に”ベストだと思い、休学を選択しました。
基本的に、弊社は「本人が決めたことに対しては寄り添う」スタンスです。「明確な評価制度」と「社員の意見を尊重する環境」が、インターン生が成長できる要因だと思います。

学生は、企業のアンテナになる。現代社会で生き残るための「変化する力」は学生が持っていた。


ーー最後に、長期インターンのメリットについて教えていただければと思います。ご自身の経験を踏まえて、学生時代に会社で実務経験を積むことにはどんなメリットがあると考えますか?





帆苅
:1番のメリットは、「視野が広がること」だと思います。私は、動画メディアやスタートアップ企業とは縁のない場所にいた人間です。しかし、長期でこの会社に身を置いたことで、メディア運営の裏側やスタートアップでの働き方を知ることができました。入ってみなければ見られなかった景色があったのです。


学生の多くは、自分たちが置かれている境遇しか知り得ません。その上で、進路選択をするのは恐怖に近く、もったいないです。だからこそ、多くの時間を割ける学生時代に、インターンに参加して視野を広げていくべきだと思います。


また、弊社の場合ですと、同世代のインターン生が多く在籍しています。長期間共に仕事をしていると、深い人間関係を構築することが可能です。インターン生に限らず、私たちを指導してくださるメンター社員との間にも信頼が生まれます。仲間たちと「一緒に事業を作り上げていく経験」は、長期インターンに参加していなければ得られない大きな財産といえるでしょう。このような経験を学生時代に持てるのも、長期インターンに参加するメリットです。


ーー単にビジネスの知識や業務スキルが向上するだけではないんですね。逆に、企業側にも「学生インターンを採るメリット」はあるのでしょうか。


佐藤:もちろんあります。特に、スタートアップには若い世代の力が必要です。弊社のように前例のない領域でビジネスを立ち上げる際には、挑戦意欲が高く、知らないことを自ら吸収していける人が戦力になります。若い世代は、ビジネス経験が浅い分、吸収力が非常に高いです。そのため、弊社はサービスの立ち上げ段階からインターンを採用しました。


ーー若い人材、つまり学生の中でも「成長したい・吸収したい」という想いが強ければ強いほど、スタートアップでバリューを発揮できるわけですね。





佐藤
:それと併せて、学生は大人たちと比べて「変化する力」も長けています。身に付けるべき知識やスキルは、事業の成長や市場の動向に合わせていくことが必要です。動画メディア市場も、もしかしたら1年後には全く売れない業界に変わるかもしれない。そういった状況で生き残れる会社は、変化を前向きに捉え、その時に必要な知識やスキルを随時「キャッチアップ」できる会社だと思います。


現時点でスキルがあって満足している人よりも、成長意欲が高く変化に対して素直に対応できる人の方が、3年や5年のスパンで見たときに圧倒的に伸びます。そういった人材と一緒に働けることは、会社にとっても、本人にとってもメリットがあるんです。