JALと言えば、ANAと並んで昔から日本の航空業界で重要な役目を担ってきた企業です。JALと言えば2010年には業績不振と債務超過によって会社更生法の適用を申請し倒産し、上場も廃止されましたが、2011年には会社更生も終了して普通の民間企業に復帰し、2012年からは東証一部に再上場しています。現在は利益も確実に出しており、2017年3月期の決算では経常利益1650億円と莫大な利益を創出しています。また、平均年収も約860万円とANAと比較しても遜色ないレベルになっており、就職活動人気ランキングでも上位に食い込んでいます。ここではそのようなJALの特徴や選考対策について就活生が知っておくべき情報について説明します。
JALの主な事業内容は?
まずはJALの事業内容について説明します。JALの主な事業は、航空運送事業です。要するに飛行機を使用して旅客や貨物を運ぶのですがただ飛行機を飛ばしているだけではなく、子会社まで含めれば、空港内で航空機の誘導やカーゴ業務を行うグランドハンドリング、空港のカウンターやラウンジ、ロビーなどで接客を行う空港旅客サービス、航空機、エンジンや航空部品等の整備を行う整備事業、貨物・郵便を取り扱い貨物取扱施設の管理などを行う貨物事業、機内食調製や手荷物宅配、給油等を行う空港周辺事業、旅行の企画販売や航空座席の販売などを行う旅客販売事業やその他システム開発、運用など、空港に絡む業務を総合的に行っています。また、顧客基盤を活かしてクレジットカード業務も行っており、2014年には会員数300万人を突破したと言われています。
競合と比較したJALの強み
では、航空業界で競合と比較した時にJALにはどのような強みがあるのでしょうか。
まず、国内の航空会社ではANAとともに二大巨頭だと言われています。ANAやJAL以外のLCCが発達してきたと言えども、未だに2社のシェアは高く、日本の航空業界の市場規模約3兆4100億円のうち、ANAホールディングスが約1兆8000億円、JALが約1兆3400億円という事で、2社で航空業界の市場規模の約9割を占めています。JALに次いで3位の日本郵船が約846億円の事からもANAとJALの巨大さを推し量る事ができます。
ANAとJALを比較した時にどのような強みがあるかという事ですが、まずJALは2010年に経営破綻をしており、逆説的にこの事が強みになっていると考えられます。この時にJALでは今までの業務を見直し徹底的なコストカットを行いつつ、人員の整理解雇を行い、収益を挙げられるような経営体質への改善が行われました。このように一度、会社の状態をリセットして強い経営体制を作り上げられた事がJALの強みだと言えます。
2011年の会社更生終了後、JALは着実に利益をだしており、経営再建が終わった2012年度の決算から営業利益1952億円を達成し、その後も安定して1600億円から2100億円程度の営業利益を生み出し続けています。売上だけで比較するとANAが約1,3倍程度の大きさとなっていますが、営業利益はむしろJALの方が大きいと言えます。例えば2016の決算で比較すると、ANAは営業利益約1364億円ですが、JALは営業利益約2091億円とJALはANAに対して約1.5倍の利益を生み出しています。営業利益率で比較するとANA7.6%に対してJALは15.6%とJALの方が効率的に利益を生み出す体質ができているとできます。
また、JALは一度経営破たんしたので多額の負債を背負っているというイメージがありますが、利子が発生している負債についても、JAL約680億円に対してANA約6800億円と実はJALの方が負債は少なくなっています。
このように売上で比較するとANAの方が大きく見えますが、財務上はJALの方が安定した経営を行っている事が分かります。ただし、これはANAとJALの経営方針の違いから発生している差であるとも考えられます。
ANAはバニラエアやピーチなどのLCCブランドを傘下に収めており、LCCの市場を拡大しようと積極的に投資を行っています。一方でJALではLCCには参入せずに通常の旅客運送ビジネスで利益率の高いビジネスを行っています。LCCの市場がどのように成長していくかという事によって、今後ANAとJALの立場も変動していくと考えられます。
また、サービスの品質もJALは高いと言われています。リクルートライフスタイル内のエイビーロード・リサーチ・センターが毎年行っているエアライン満足度調査2017ではJALが「総合満足度」「客室乗務員の接客サービス」「空港係員の接客サービス」の評価項目で首位を獲得しています。日系の航空会社がこの調査において総合首位になったのは2007年以来10年ぶりの事でJALのサービス品質に掛ける熱意がわかります。
JALはどのような学生を求めているのか
では、このように日本の航空業界をANAとともにリードするJALですが、JALではどのような人材を求めているのでしょうか。
JALグループでは求める人材像として7つを示しています。
・感謝の心をもって、謙虚に学ぶ
感謝の気持ちを常にもち、世の中すべてから謙虚に学び、自己成長できる人財
・果敢に挑戦し、最後までやり遂げる
失敗を恐れず常に新しい事に挑戦し、人任せにすることなく最後までやり遂げる人財
・プロ意識をもつ
自分の仕事に誇りと責任をもち、地道に自分の専門を極める人財
・採算意識をもつ
JALグループが社会から必要とされ、永続的に発展する為に、強い採算意識をもつ人財
・多文化を尊重し、適応する
世界の多様な文化と積極的に触れ合い、異なる文化・価値観を尊重できる人財
・仲間と共に働く
仲間と共に働き、仲間のために頑張ることに誇りと喜びを感じられる人財
・お客さまに心を尽くす
すべてのお客さまに、感謝の気持ちを形にしてお返しすることができる人財
他の企業の求める人材像と比較してユニークなのが「採算意識をもつ」という事を挙げている事です。もちろんエントリーシートなどで採算意識を持っているかと聞かれる事はありませんが、採算意識は就活生にとってあまり意識が働かない項目です。例えば、エントリーシートでは体験談について色々書きますが、「仲間にとって無駄に中の作業を増やしただけではないか」という体験談も少なくありません。何か自分の体験について語る時は採算意識を持って合理的に何かに取り組んだ体験談かどうかという事を意識した方が良いでしょう。
また、上で挙げた人材像の中でもJALの採用サイトの人事部長のインタビューでは特に「チームワーク」と「プロフェッショナル」という言葉に紙面を割いて説明しているので、この2つのキーワードを意識して選考を受けた方が良いでしょう。
まとめ
以上のようにJALについて就活生が知っておくべき情報について説明しました。航空業界は実質的にANAとJALの二強になっており、両社とも就活人気企業ランキングで毎年上位に入る就活生にとって人気の企業で、JALを志望している学生も多いと考えられます。
一度倒産したためにJALの方がANAよりしっかりした基盤を持っている会社だと思われがちですが、一口にそうとは言い切れません。JALは会社更生にあたって利益を確実に生み出せる経営体制への変革を行っており、売上についてはANAの方が多くなっていますが、営業利益はJALの方が多くなっており、営業利益率は2倍程度JALの方が高くなっています。また、有利子負債についてもANAに対してJALは10分の1程度の負債で堅実な経営が行われていると言えます。ただし、この2社の財務的な違いはLCCに投資するANAと既存事業に集中するJALという経営スタンスの違いも財務的な違いの原因となっているので長期的にはどちらが良いと一概に言う事はできません。
また、JALでは求める人材像として、7点を挙げていますが、特に「チームワーク」と「プロフェッショナル」が重要だと考えられるのでJALの選考を受ける人は注意してください。