キーエンスは1974年に創業して以来、ファクトリー・オートメーション用センサーや測定器、画像処理機器などを製造してきた、モノづくりの現場を支える企業です。
知名度は決して高くありませんが上場企業であり、世界45か国200拠点で事業を展開している超一流企業なのです。
そして、驚くべきは社員の年収です。
東洋経済社の上場企業年収ランキングでは、堂々の1位を獲得しました。
40大の推計年収は、何と約1千5百万円だったのです。
(引用:http://toyokeizai.net/articles/-/13857?page=2)
ここでは、謎めいたモノづくり企業キーエンスの企業研究についてまとめてみました。
1.キーエンスの主な事業内容は?
キーエンスの事業はBtoBが主体です。
具体的には、企業向けのファクトリーオートメーション(FA)用センサーをはじめとする、生産現場の生産性・品質向上のための機器の製造販売を主な事業内容としています。
そのため、個人向けの商品を売り出したり広告を出したりということがないため、知名度はそう高くはありません。
しかし、年収ランキングNo1になるほどの、売上を上げている上場企業です。
その事業内容は幅広く、次のような業界で多くの製品を生み出しています。
・半導体・液晶業界
半導体チップの製造ラインにおいて、非接触でチップの高さを高精度に検出する装置を製造しています。
この技術により、半導体チップの製造ラインにおける品質チェック作業の効率を高めることに成功しています。
・自動車業界
自動車のドアフードを取り付ける際に溝の幅を自動測定する機器を製造しています。
この機器を製造ラインに導入することにより、自動車製造の品質向上につながっています。
・電機・電子業界
製造工場において、ロットナンバーをバーコードで読み取ることができる機器を製造しています。
この機器を導入することにより、シリアルナンバー管理を自動化することができます。
・食品・薬品業界
食品や薬品製造ラインにおいて、パッケージ不良の検出や製造年月日や賞味期限・消費期限などの印字の有無を検出する機器を製造しています。
この機器を導入することで、食品や薬品パッケージの品質向上につながります。
・金属・鉄鋼業界
金属・鉄鋼業界の生産現場における事故防止装置や安全装置の製造を行っています。
人の目で点検するだけでは完全に事故を防ぐことはできませんが、これらの機器を現場に導入することで、仕組みの面で安全性の向上を図ることができます。
・化学・プラント業界
化学・プラント工場でエネルギー使用量の記録を自動化する機器を製造しています。
この機器を導入することで、エネルギー使用量のデータ取得を自動化することができ、省エネ対策につながります。
2.競合と比較したキーエンスの強み
キーエンスが属する業界はセンサーを製造・販売するセンサー業界ですが、その中でのキーエンスの強みとは一体何なのでしょうか。
・非接触センサーに特化して「業界初」「世界初」を目指す
キーエンスの主力商品は非接触センサーの領域です。
同じようにセンサーの商品を主力としている競合他社は、オムロンやSUNXがあります。
しかし、オムロンやSUNXは接触タイプのセンサー市場にも参入していますが、キーエンスはこの接触タイプのセンサー商品市場には参入していません。
さらに、キーエンスの売上高の約30%は新製品による売り上げです。
そのうち約70%が「業界初」「世界初」の製品であるというのは、驚くべきことです。
キーエンスでは、ほぼ1年から3年のサイクルで新製品を開発し市場に投入しています。
短期間で多くの製品を生み出す企画力と開発力の高さが、キーエンスが持つ強みと言えます。
・機種のシリーズや形式を少なく抑えて汎用品を売り出す戦略
キーエンスは他社とは異なり、一つの商品から多くのラインナップの商品を生み出すことをしません。
普通は、新商品を出したらその商品を軸に製造ラインナップを広げていくのが一般的です。
そうすることで、商品企画や開発は一回で済み、色違いや型違いの商品による複数のラインナップを展開することでコストを抑えて売り上げを伸ばそうとします。
しかし、キーエンスはそうではなく、むしろラインナップを増やすことで製造プロセスが複雑化するのを嫌い、単一の型の製品のみを製造することで製造コストを下げています。
これは、商品開発力が高く、短いスパンで新商品を売り出すことができるキーエンスならではの戦略でしょう。
・特許出願を極力抑えて商品の付加価値で利益を上げる
同業他社のオムロン、SUNXと特許出願件数を比べてみると、キーエンスの特許出願数はかなり少なくなっています。
特許を出願することで開発した商品を独占的に販売し売上を伸ばすというのが、他社の戦略です。
一方で、キーエンスは特許を出願するよりも、特徴のはっきりした新商品の開発に積極的に取り組んで利益を得る方を重要視していることがわかります。
参考資料:https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180125141631.pdf?id=ART0010576971
3.どのような学生を求めているのか
キーエンスの企業サイトなどを見ると最初に目に飛び込んでくる言葉が、「付加価値を与える」という文字です。
これまでにない特徴を持った付加価値を持つ商品を次々と製造しつづけるキーエンスにとって、最も重要な言葉なのでしょう。
そんなものづくり企業であるキーエンスは、どのような学生を求めているのでしょうか。
・自分を「深く」知り、企業を「広く」知り、就職を本質的に見極める
キーエンスが学生に求めることの中に、自分を「深く」知るということが挙げられています。
一人一人の学生が企業を選ぶ際に、大切にしている「価値観」があると思います。
キーエンスでは、この「価値観」が具体化されているかということを最初に挙げています。
具体化された価値観とは、例えば、「大きな仕事をしたい」「社会に貢献できる仕事をしたい」などという抽象的なものではありません。
「いつまでに」「どれくらいの範囲で」「どのように」と、具体的に対象や期間、程度を示すことができる価値観が、具体的な価値観です。
そして、多くの企業を「広く」知ることも重要です。
自分に合った企業を本当に知るためには、多くの企業について学ばなければなりません。
そうすることで、就職先を本質的に見極めることができるでしょう。
・キーエンスの募集職種はビジネス職とエンジニア職
キーエンスの募集職種は、ビジネス職とエンジニア職の二つに分かれています。
ビジネス職の分野では、「売るモノは商品だけでなく、課題解決のアイデア」というメッセージが投げかけられています。
商品を売るだけではなく「クライアントの課題解決のアイデア」を生み出す力が求められているのです。
クライアント自身も気づいていない潜在的な課題やニーズを発見し、具体的な解決方法を示すという使命が与えられています。
エンジニア職の分野では、「顧客が欲しいというモノは創らない」というメッセージが投げかけられています。
すでに表に現れている顕在化した課題やニーズを追いかけているだけでは、他にはない商品を作り出すことができません。
まだ誰も気づいていない、クライアント自身もわかっていない課題を見つけ、それを解決する方策を生み出すことが求められているのです。
4.まとめ
キーエンスは知名度こそ低いものの、年収ランキング一位に躍り出る、短いスパンで多くの商品を開発する、競合他社の追随を許さない独自の商品開発路線を守る、優良企業です。
そんな実力の高いものづくり企業に入るためには、地に足の着いた就職活動と、地道に実力をつける期間が必要とされるでしょう。
自分に自信がある学生は、キーエンスが求める人物像をしっかりと理解し、選考に挑んでみてください。